料理長からの食材だより
どんな調理法でも美味しくいただける「鰊(にしん)」
2021年4月16日
今月は、鰊(にしん)についてお話したいと思います。
ニシンは冷たい海域に棲むニシン科の回遊魚で富山以北、太平洋側では犬吠埼以北に分布し、動物性プランクトンやオキアミ類を食べながら回遊してる魚です。この種の魚は北部太平洋をまたいでアラスカからカナダ、カリフォルニア北部まで広い海域に生息しています。
ニシンの名前の由来は、身欠きニシンを作る際、身を二つに割ることから、身が二つという意味で「二身」ニシンとなったと言われています。
北海道沿岸では春になるとニシンの大群が産卵のために浅瀬に押し寄せ、アマモや昆布などの海藻類に粘着性の卵を産み付けます。
ニシンの卵は粘着性が強く昆布などの海藻にびっしり張り付くので、この昆布が寿司ネタにもなっている子持ち昆布になります。
江戸時代後期あたりは北海道でニシンが大量に獲れ、当時の松前藩は米が取れないので代わりに、ニシンの干物、身欠きニシンを年貢として納めていたという記録もあるそうです。また、大量に獲れたニシンは食用だけではなく、脂を絞ったり、絞りかす「鰊粕」と呼ばれる肥料として北前船で内地に運ばれ、大きな収入源となっていたそうです。
石狩湾系のニシンの漁期は1月~4月までで、2月~3月に最盛期となり、4月に入るとその数は減っていきます。知床あたりになると1月~4月は流氷などで操業できず、漁期は5月~6月になってしまいます。
産卵期の3月~5月にかけて漁獲量がまとまり、卵や白子を持つ美味しいニシンが食べられるので、この時期がニシンの旬とされています。
しかし、魚そのものを味わう意味では、産卵前に十分に栄養を蓄えて秋から冬に獲れるニシンの方が脂も乗っていて身自体がすごく美味しくなっています。
お刺身・塩焼き・煮つけ・どんな調理法でも美味しくいただける魚です。
もし、お寿司屋さんで見かけたら、是非召し上がって下さい。