料理長からの食材だより
馴染み深く栄養価に高い「ひじき」
2021年3月16日
今月は、「ひじき」についてお話したいと思います。
ひじきの語源は、明らかとは言えませんが、古名の「ヒズキモ」が転じて「ひじき」になったと言われています。漢字で書くと「鹿尾菜」と書き、ひじきの形が鹿の黒くて短いしっぽに似てる事が由来のようです。
ひじきの旬は春で知られていますが、採れる量や解禁日など人間の決めたルールに従った旬で、味で決めるなら冬です。それも新芽が伸びて、まだ小枝や葉を出してない1本ひじきが柔らかくて灰汁がない究極のひじきだと言えます。
しかし、冬は干潮が夜間のため、1本ひじきを探すのは至難の作業。また解禁前という事もあり、自家消費用にごく少量採っているだけのようなので、殆ど市場には流通しません。なので、ひじきの旬は春とするのが無難のようです。
ひじきは暖海性の海藻で道南から九州にいたる太平洋岸、瀬戸内海、日本海南部の磯に分布しています。繁殖行動は5月~7月までで受精卵はやがて岩などに付着して生長します。食用として採取されるのは、3年ほど経ったものです。
ひじきの解禁時期は各地で異なりますが主に3~4月の春です。
この頃、新物の生ひじきも流通し始めます。干潮の時間帯に波しぶきを浴びながら根を傷つけないように根本近くから刈り取ります。
ひじきは海から採ったままの状態では渋くて硬くて食べられる物ではなく、10時間ほど茹でてから数日間干した乾燥ひじきが主に流通しています。
生ひじきは乾燥したひじきを水で戻し柔らかくした物を生ひじきとして販売しています。
食物繊維が非常に多く、採り過ぎた塩分・糖分・脂肪分などを体外に排出してくれる効果があり、また血圧を下げるカリウム・カルシウム・鉄分も多く含まれていうので、貧血気味の方にもお勧めです。
一般的に甘辛く炊いた煮しめや、御飯と一緒に炊くひじきご飯がお馴染みですが、かき揚げや酢の物にしても美味しい食材です。
漁師料理や郷土料理として有名なものは見当たりませんが、それだけ馴染みが深く栄養価に高い、全国どこでも季節に関係なく食卓に並ぶ食材と言えるのではないでしょうか。