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料理長からの食材だより

春の山菜「蕨(わらび)」と「ゼンマイ」

2018年3月16日

若葉を茂らせる新緑の季節もすぐそこまでやってきました。
今月は、山菜の蕨(わらび)とゼンマイについて、お話ししたいと思います。
蕨やゼンマイは、全国の山裾や沢沿いなどの比較的湿った場所に自生し、春の時期に芽吹く代表的な山菜として知られています。天婦羅・お浸し・お蕎麦などの和食で見かけるおなじみの食材ですね。
どちらもシダ植物の一種で、先がクルリと渦状に丸まった芽を食用に摘み取ります。
見た目の一番の違いはゼンマイは芽が大きな1つ、蕨は小さな芽が3つあること。また蕨はぬめりがあってクセがない味わい。一方ゼンマイは独特の食感がたのしめます。

山菜を食べるには適度な灰汁抜きが必要となります。灰汁抜きは山菜の中に含まれる、えぐ味や渋みなど取り除く作業です。特に蕨には発癌成分が微量に含まれており、伝統的な灰汁抜きにより分解し無毒化することがわかっています。
蕨やゼンマイのような繊維の多い山菜の灰汁抜きは、蕨やゼンマイを壺や陶器の器に入れ上から藁の灰をまぶし熱いお湯をかけ落し蓋をして1日置きます。今では、重曹を入れて繊維を柔らかくし灰汁抜きする方法が主流になっています。
また近年は地域の特産品を開発する目的で蕨やゼンマイの機能性が調べられています。
両方とも抗酸化機能が認められ、それにはポリフェノール成分が関わっているとか。灰汁抜きをした後、若干損失しますが、大半が残在するとも言われています。

また、蕨とゼンマイの語源はというと諸説ありますが、蕨は焼いた藁に似てることから藁火が転じて蕨になったと言われています。ゼンマイは渦を巻いた新芽が穴の空いた古銭に似てることから、銭巻が語源という説があります。
万葉集などには蕨の名がしばしば登場しますが、歌の内容から生育環境を推し量ると、実は蕨ではなくゼンマイであったり、その近縁種ではないかといわれています。当時はまだ蕨やゼンマイの食習慣はなかったと見られ、その風味を歌った和歌もありません。
食卓に上がるようになったのは江戸時代以降で、明朝伝来の本草網目という漢字書には蕨の灰汁抜き法も詳しく書かれているそうです。

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